私は「コレ」で、ビジネスを“クビ”になりました
産業は線型ではなく、構造的に変化している
■ 線型に発展していない産業
経済社会の発展につれて、第1次から第2次、第3次へと産業従事者数が多くなるという古典的な産業分類を、日本では長らく国家的に使ったことから、あまりに有名だ。
ところが産業構造が大きく変化し、最近の進展著しい新しい産業に、この産業の線型発展理論を便宜的に適応する人たちが多いのは問題だ。
たとえばファッション産業や情報産業に対して4次産業とか5次産業とか、単純な産業構造発展論を示す学者や評論家が多いことから実務を遂行する人たちに混乱を与えることにもなる。
1、2、3と発展するからもっと発展した形態は、4、5、6という単純発想では、見えるものも見えなくなる。
産業構造は、そんなに簡単な段階的発展をしているわけではないだろう。
ここでは産業分類について、私の提唱した三次元産業分類という考え方を紹介してみたい。高い感性に関わる産業や情報産業が、多少ともわかりやすくなるはずだ。ちょっと段階を追って説明してみることにしよう。
■ X軸産業(物財産業)の時代
図示のように生活が自然と一体化している時代は自給自足部族社会で、いわゆる先史時代だ。もっともアマゾンや西イリアンの奥地では、今なおそうした生活
も見られる。
農業が食糧の備蓄を始め、さらに大規模化して灌漑農業が始まる時代になり、国家が誕生する頃になると、産業は分業化が進む。
モノ、物財を中心とした自然からの採集や略奪としての生産。そして加工、さらに流通の産業分類は、この時代からはじまっていたのだ。
この純然たる物資の流れをX軸として位置付けてみよう。したがって、ペティ=クラーク流の第1次~第3次産業は、X1産業、X2産業、X3産業と表現する。
国家が誕生した時代から、産業革命を経て、工業社会が本格化するまで、ほとんどの産業従事者がX1に集中する時代が続いた。日本でX1従事者、すなわち第1次産業従事者が50%を割ったのは戦後(50年国勢調査では48.5%)のことであり、現在わずか6%程度だ。
1970年頃までの日本は、X軸だけを意識していればよく、メーカーはひたすら品質の向上と生産の拡大を念頭に努力し、販売会社はメーカーからの商品をひたすら売っては富を築いたのだ。およそペティ=クラーク流の、クズネッツの理論どおりに展開した。
■ X軸産業の成熟、停滞と付加価値型産業の発展
だがこの第1次~第3次産業への従事者数は、90年代初めには第3次産業が60%を越え、95年国勢調査では61.8%となっており、まず第3次産業になんでもぶち込む分類の再整理が必要になっている。
1960年代も終わりに近づくころ、日本にとって、米国はまだまだ技術的にも経営的にもはるか彼方の存在だったが、高度成長でそれなりに自信をつけた日本には、未来学ブームがおこり、ことに情報社会についての議論が多くなっていた。このころ日本では次々と未来学関係の出版が続いた。
※以下は注釈
●産業分類のはじまり
産業の発展段階説は第1~3次産業、つまり農林漁業、生産加工業、流通小売業と、あらかた分類できる産業分類がポピュラーだ。この第1~3次(Primary Industry, Secondary Industry, Tertiary Industry)というポピュラーな名称は、ニュージーランドのフィシャーによってつけられた名前だ。しかし概念そのものは古く、17世紀のイングランドのペティによって『政治算術』のなかで示されていた。コーリン・クラークは社会の発展とともに第1次、第2次、第3次と、産業の重心がシフトするという、発展段階を実証して彼はペティの法則と呼んだ。さらにクズネッツが肉付けしてクラークの名を冠し、ペティ=クラークの法則と呼ばれるこのことからペティ=クラーク=クズネッツの法則と呼ばれることもある。
●三次元産業分類について
三次元産業分類のコンセプトに関する初出資料は京都府委託事業『ハイタッチ研究所構想』(1983年)である。私の事務所が受託した事業は当初『ハイタッチ…』ではなかった。ファッション産業や、デザイン性の高い、また京都の高度な工芸なども含めた産業活性化について、描かねばならなかったが、この産業群のくくりが非常に困難だった。
その少し前にJ.ネイスビッツの『メガトレンド』に示された情報社会への10大潮流のなかにハイタッチという用語を拾い、この事業の冠にした。そしてこのハイタッチの位置づけを構造的に把握するなかでこの三次元産業分類が完成した。
なお、ハイタッチ研究所構想は『ハイタッチリサーチパーク』として京阪奈文化学術研究都市の一角に展開している。
一般書での初出資料は、以下の書に発表している。
高橋憲行著『時代の構造が見える企画書』
(1984年実務教育出版社)
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